子どものやる気はどうすれば起きるのでしょう?
「親の押しつけや叱り飛ばしだけでは、決して生まれません」。
そう断言されるのは、「『勉強しろ』と言わずに子どもを勉強させる法」の著者、小林公夫氏です。
同著はすでに約20万部を数えるベストセラーで、今なおさらに売れ続けています。
豊富な指導経験に基づく「子どもを伸ばす親の関わり方」をお聞きしました。

一橋大学大学院法学研究科博士後期課程修了。法学博士(一橋大学)。現在、明治大学法科大学院教育補助講師として、刑法、刑事訴訟法を指導する傍ら、司法試験予備校TAC・Wセミナーでロースクール入試講座を担当している。主著に「ドラゴン桜九巻」(三田紀房著/講談社)でも取り上げられた「論理思考の鍛え方」(講談社現代新書)をはじめ、累計約20万部のベストセラー「『勉強しろ』と言わずに子どもを勉強させる法」、
中学受験のバイブル書「中学受験に合格する子の親がしていること」(いずれもPHP新書)、「東大生・医者・弁護士になれる人の思考法」(ちくまプリマリー新書)などがある。
子どもが「ツブれる」のは、本人の問題よりも親の問題
私はこれまで約30年以上に渡って、中学受験生はもとより、医学部受験生、司法試験受験生、ロースクール受験生を指導する機会に恵まれてきました。なかでも、17年間代表を務めた医学部受験予備校では、総計100人以上もの学生を無事医学部に入学させた経験も持っています。
こうお話しすると、いかにも受験教科の解答テクニックばかりを指導しているように思われるかもしれません。もちろんそれも大事です。しかし私は、多くの生徒を指導する中で、それだけでは合格に至らないことにも気づきました。解答テクニックを教える以前に、「何か」を改善しなければならないケースが驚くほど多いのです。それなくしては、なかなか合格にはたどり着けないのです。
そもそも、伸びる生徒と伸びない生徒では、いったい何が違うのでしょう? 持って生まれた頭脳のよさなのか? あるいは精神的な強さなのか? とかく本人ばかりに焦点を当てて考えがちですがそうではありません。実は、そこに大きく影響しているのは「親の関わり方」なのです。親が子どもにどう関わっているのか? それしだいで本人の「やる気」も変わるし、受験勉強に取り組む姿勢そのものが変わってしまうのです。
無意識のうちにやっていませんか? やってはいけないあんなコト、こんなコト
それでは、受験生の向こうに見え隠れしている「子どもをツブす親」とはどんな親なのでしょう? そこにはいくつかの共通する特徴があります。これまで多数の生徒を指導してきた私の実体験に基づいてお話します。
●子どもをツブす親【パターン1】
結果が出ないとすぐにガミガミいう親
有名塾に通わせればきっと成績は上がるに違いない・・・。そう信じて通わせ始めたものの、結果が見えてこない。どんな行動に出るかというと、まずは子どもに対して「ちゃんと勉強してるの?もっと頑張りなさい」。それでも上がらない。今度は塾に対して「何でウチの子は成績が上がらないの?」。それでも上がらない。次は近所の親に「あそこの塾はダメ、先生もダメ、うちの子の通う小学校はダメ、先生もダメ」。ウソのような話に聞こえるかもしれませんが、こうした方は思いのほか多いのです。
何が間違っているか? 常にダメなのは自分以外、責任はすべて子どもや塾の先生、学校の先生に押し付け、攻撃対象としてしかコミュニケーションしない。つまりすべては「人まかせ」。これでは子どもにまったく関わっていないのと同じです。こうした環境の中で子どもは前向きに「勉強しよう」と思えるでしょうか? 親を信じられるでしょうか? 子どもが欲しているのは、一緒に悩んでくれ、励ましてくれ、褒めてくれ、驚いてくれ、喜んでくれる親のハズです。
●子どもをツブす親【パターン2】
1年中机にはりついて勉強していないと気がすまない親
とにかく、子どもがつねに机に座っていないと気がすまない親もいます。ゴールデンウィーク、お盆、年末のクリスマス、果ては元旦でも「勉強しなさい!」。もちろんご本人はよかれと思ってそう指導されているのだと思います。しかし考えてみてください。そんなこと、みなさんならご自身でできますか? いや、無理ですよね。息が詰まるはずです。
そもそも勉強に大切なのは集中力です。時間の長短だけではありません。効率よく脳が活動する時間に集中して勉強しなければ、インプット(新しいことを覚えるなど)もアウトプット(覚えたことを使って問題を解くなど)もできません。ですから、休憩も、リフレッシュも、遊びも、家族でゆったり過ごす時間も必要です。メリハリが大切なのです。こんな環境になったら子どもはどうなるか? 仕方なく言われるままに「机に向かっていたずらに時間を費やす」だけになってしまいます。これこそが本当のムダです。
●子どもをツブす親【パターン3】
偏差値や点数にやたら振り回される親
親からすれば、いま子どもが受験生の中でどの位置にあるのか? は知りたくて仕方ない情報です。偏差値や点数はそれを明確に示してくれるものですから、それに頼ってしまうのもわかります。しかし、これらの数字はあくまで目安に過ぎません。
例えば、「4月の模試偏差値50」と「9月の模試偏差値50」は同じか違うか? 50という数字自体は同じですが、みんなが必死で追い込んでいる9月にも50をキープできたことには大きな価値があります。同じ50と言う数字の裏にある、子どもの努力の重さが違います。
また、成績は勉強したと同時には上がるものではありません。早くても1~2カ月後ぐらいにやっとあらわれてくるものです。私はこれを「能力のマグマ」と呼んでいます。マグマが噴出するには、まず冷えているマグマが内部で温められねばなりません。しだいに高温になって圧力を高め、地殻を打ち破るほどの力を持って初めて、表に流れ出ます。
勉強を始めて最初に覚えた知識は一つの「点」に過ぎないのです。勉強するうちにしだいに「点」が増えて「線」になり、たくさんの「線」が重なって「面」になる。その時になって初めて問題が解けるのです。きっとみなさんもそうした経験をおもちのはずです。
きちんと勉強を続けていれば必ずマグマは表に出ます。結果につながる寸前まできた子どもに、「なぜ偏差値が上がらないの?」と水をさす一言があったらどうなるでしょう。努力をわかってもらえない無念さから、やる気を失ったマグマは一気に冷えてしまいます。
●子どもをツブす親【パターン4】
受験に憧れと夢ばかりを追い求め、子どもの適性に目を閉ざす親
有名中学・高校・大学に行けば、周囲の目も変わるし、就職にも有利でしょうし、まして医学部などであれば将来も安定しそうな気がします。世界的経済不況や終身雇用の崩壊など、声高に不確かな時代が叫ばれるだけに、どうしても「保険・保証」のようなものが欲しくなる。とりわけ中学受験の場合は、志望校も親が主体となって決めていかねばなりません。だからと言って、「選ぶならやっぱり有名中学・高校・大学」という選択基準でよいのでしょうか?
たとえ親子であっても、子どもは別の人格です。親とは違う考え方をもち、違った個性を持っています。その学校を卒業して、やがて仕事に就いて、人生を生きていかねばならないのは、親ではなく子ども自身です。
親の独りよがりで学校を選んではいけません。入学したらどんな学生生活を送りたいのか? 将来やってみたいことは何なのか? などを子ども自身に考えさせてみることも大切です。そのうえで親は子どもの個性を尊重しながら、どんな環境なら子どもが一番その子らしく育つのか?を考えて志望校を決めてあげてください。
秋には、学校説明会が始まります。どんな子ども達が入学しているのか? 建学の理念や校是は?どんな人間教育を実践しているのか? クラブ活動のようすは? 文化祭や体育祭での生徒の目の輝き方は? そうしたカリキュラム以外のところにもぜひ注目してチェックして見てください。
●子どもをツブす親【パターン5】
子どもの成長を褒めない親、驚かない親
子どもは、ある日突然グンと進歩・成長するものではありません。成績も然り、です。
[算数の文章題を解こうとすると・・・]
最初は意味すらわからなかった文章題だが、何を問われているのかだけはわかった。
↓
式の作り方もわかるようになったが、計算を間違えた。
↓
計算もキチンとできた。
↓
答えを出す時間が短くなった。
↓
もっと別の方法でも解けるようになった。
例えば、算数の文章題一つでも、このような成長のステップがあります。それらは気づかなければそのまま見過ごしてしまうほど、小さな成長ともいえます。その小さな成長を見逃さないでください。そして褒めて、時には驚いて一緒に喜んであげてください。褒めたり驚いたりすることで子どもは「うれしい、頑張ってよかった、もっと頑張ろう」と前向きな気持ちになれます。
気をつけないといけないのは、成長は小さな成長の連続の結果ですから、それに気づかねば、褒めたり驚いたりする機会はいつまでたっても訪れなくなってしまうことです。やる気の素は、こうしたデリケートなところに隠れているのです。これは、勉強に限ったことではありません。日ごろの生活習慣も同じです。できなかったことができるようになる力を伸ばす。これはしつけの基本です。



















