2作品目となった「ふるさと-JAPAN」の試写会も終え、西澤監督は、次回作への取り組みを考えていた。2006年の夏である。 「ふるさと-JAPAN」は監督の幼い頃の自伝をモチーフにしながら、フィクションを加えたものに仕上げたが、次回作は、原作を探してそこからシナリオを作っていくことに決めていた。 原作探し…。当分はこれに時間を費やすことになりそうだ。
時間を見つけては、本屋へ─。 毎回たくさんの本を買い込んで帰り、休みの日や深夜に読みふける日々が続いた。
「これだ!」と思える本に出会うのは、これもまた縁のもの。 何冊目の出会いだっただろうか。 いくつか監督のイマジネーションを刺激し、創作意欲をかきたてる本はあったが、作者から作品化のOKが出なかったり、アニメにするのは困難な内容だったりと、なかなか思うようには進まない。

そうこうするうちに3ヶ月、秋も半ばを過ぎて、ちょっと焦りも出てきた頃出会ったのが、川嶋あい著「最後の言葉」。
川嶋あい─ テレビ番組の“あいのり”の主題歌を歌い、若者には圧倒的な人気のあった彼女だが、監督はもちろんそんなことは知らない。
本屋で目にした、帯に記された“日本中が涙した真実”という言葉に魅かれた。
先入観なく読み出した「最後の言葉」に感動し、彼女が歌手と知るや早速、近所のCDショップに駆け込んでCDを購入。 心が動いた。「とにかく詩がいい。メッセージ性があるし、もちろん、声も澄んでいて、いいんだよ。聞いているとジーンと心に響いてくるんだ」 同じCDを聞くたびに、いつも目を輝かせてそう言った。
周りは「本気ね」と感じたものだ。
「これ、アニメにしたい」「次回作はこれでいく」 その決断からすぐに、スタッフは動き出す。
所属の事務所は?今までに映像化のオファーはなかった?
とにかく、事務所に当たってみよう、とプロデューサーの村上氏は、電話をとった。
2006年初冬である。
(文 西澤真佐栄)