取材を終えた監督は、3月4月と本業の合間にシナリオづくりにはげむ。しかしなかなか思うように進まない。つらい。。。。
5月――ゴールデンウィーク。監督はなぜかソウルにいた。
このソウルという地が、後々ちょっとした意味を持つことになるが、この時はそんな気配もなかった。
ただ漠然と、ソウルにこもってシナリオを書き上げたい!と考えたに違いない。
強いてソウルだった理由を挙げるなら、日本から一番近い海外。日常の煩雑さから逃れられるので、シナリオつくりに没頭できる。
日本語が聞こえてこないのも、かえっていいかも。
ハングル(韓国語)はイントネーションがリズミカル、意味は分からないから、BGMのように聞こえてくる。
それに、ソウルは去年1作目の「NITABOH」が、グランプリを受賞したこともあるし、いまや韓流ブームもあり、韓国では映像や、その他エンターテインメントに関しては、並々ならぬ力の入れよう。
確かに、アニメの技術も日本と肩を並べるほどになっているし、作品の完成度も高い。
ソウルに身を置いて書き上げるのも、ひとつの方策だった。
もちろん、美味しい食事にこと欠かないのも、大きな理由。
日本語が少しは通じるところも、かなりいい条件だし。
ホテルの部屋で書く。
気分転換にホテルや地下街のカフェで書く。書く。書く。
6日間の滞在で、あちこちのカフェを開発して、(なぜならそれなりに静かで、長い時間いても違和感のないカフェを探さなくちゃいけない)
(スターバックやバスクーチのように、若い人たちが大勢でわいわい賑わっているカフェではいけない)
「俺、ソウルのカフェ通になった」と言わしめるほどに、カフェを渡り歩いた様子だ。

作家にはそれぞれスタイルがある。昔の作家は、常宿に滞在して原稿用紙と向き合った。地方の温泉宿には、有名作家の「名作」誕生の部屋なんていうのがある。
最近は、パソコンを持ち歩いて飛行機や新幹線の中で、書き上げる人も多いのだろう。
が、監督は、2Bの鉛筆と原稿用紙を持って、うろうろする“カフェ作家”の名前が妙に似合っている。
こうして、ソウルを離れる日には、原稿用紙100枚、約100分、およそ1100カット分に相当するシナリオが仕上がった。
制作陣はこれを受けて、絵コンテやキャラクターデザインの資料集めに入る。
いよいよ始まる!
(文・写真 西澤真佐栄)