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1990年(平成2年)3月号

一生続く「学び」の中で〜受験を通じ、自分を大きくしよう〜

■公立高校入試に臨む諸君へ

 今年度入試は、国・私立の中学・高校では全国数校を残し、ほとんどの学校で結果が出ました。これからは全国の公立高入試が始まります。
 これから公立高に挑戦する中三諸君は、健康管理を含めて最後の調整を心掛けてほしいと思います。公立高入試では各教科とも、そんなに難問が出るわけではありませんから、教科書レベルのこと、ゼミで演習した基礎レベルの所を、最後まで繰り返すのが大切です。入試本番では単純なミスが一番響きますから、できる問題から確実に押さえ、ケアレスミスをなくすよう勤めましょう。

■結果をどうとらえるか

 すでに受験結果の出た皆さんに対しては、「この一年間、本当にご苦労さま」と言いたいと思います。今年、残念な結果に終わった諸君は、もう気持ちの整理をつけることができましたか。
 いつも言ってることですが、「人間の偉さ」とは、失敗したときや困難に直面したとき、それにどう対応するか、意識の持ち方・姿勢で決まってくるのだと思います。
 大人になって世の中へ出、いろいろな道で大成している人たちの中には、人生の途上で何度も挫折経験をした人が、意外にも多いものです。
 くじけたり、ひねくれたりするのではなく、挫折するたびに挫折と一生懸命戦い、次の人生に向けて歩み出す―そういう経験の中から、人間として少しずつ大きくなっていったにちがいありません。
 合格を果たした人はこの四月から、合格した人ばかりの中でスタートすることになります。最初が肝心です。浮かれ上がってしまうのではなく、「入学してからの勉強は春休みにもう始まっているんだ」という気持ちで取り組んでいくのがいいと思います。始めに上位でスタートすると波に乗ってやっていけるのですが、いったん遅れると、後で取り戻すのが難しいものです。特に国立・私立の学校ではその傾向が見られます。

■四月スタートはこう切ろう

 ほかに注意したいのは、ほとんどの学校では、かなりの予習をやらないとついていけない、ということです。今までゼミに参加してきた人は、学校より相当早いテーマを自分で少しずつやっているので、トレーニングにはなっていると思いますが、とにかく徹底して「予習第一」でいかないと、どんどん遅れていく―そんな心構えで進んでほしいものです。
 四月のスタートの後は、できれば五月の連休前までに、授業を通してそれぞれの学校のやり方をつかみ、それに合わせて対応していけばいいと思います。

■学びの中で人は「人」になる

 一年間にわたって受験や学習について話してきました。今回はその最後になりますので、「学ぶ」ことの意味について話しておきたいと思います。最近、新聞や雑誌で「生涯学習」という言葉がよく使われています。「学び・学習」というと、今までは、学生の間のこととして考えられてきました。しかし、世の中が少しずつ豊かになって、数十年前までは「五十年」とされた人生も、今は「八十年」といわれるようになりました。
 人間は学生の時だけでなく、年齢を重ねていく各過程でも学ぶ必要があり、いろいろな学び方がある。そして「学ぶこと」は生涯を通じて考えられるべきことである―時代の変化の中で、「学び・学習」はこんなふうに位置づけられるようになってきました。
 今、皆さんは各教科の勉強をし、受験があり、最終的には大学で専門的な勉強をしていくわけですが、今の学びそのものも、一生の学びという大きな流れの中の一部なんだということを考える必要があると思います。学びは一生続けるものであり、さらに言えば人間は学び続けることで“本当の人間”になっていくのです。このことを考え方の基本として、しっかり持ってほしいと思います。

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